公開日:2025年1月9日
- インタビュー
陸上競技男子砲丸投げの奥村仁志選手へのインタビューはぴっ♪
はぴっ♪
今年8月に陸上競技の「アスリート・ナイト・ゲームズ・イン・フクイ2024(ANG)」で日本新記録を打ち立てた男子砲丸投げの奥村仁志選手(旧和泉中、敦賀高校出身)に、今シーズンの活躍についてお話を伺ったはぴっ。ANGでは最終6投目に19メートル09のビッグスローを決めて見事優勝。来シーズンはさらなる日本記録の更新に期待が高まるはぴっ♪
―今シーズンの振り返りと来シーズンの目標を教えてほしいはぴっ♪
地元・福井のANGでは日本新記録で優勝することができて、シーズン最後の大会(10月の田島記念)では負けてしまいましたが、『全国3冠』(6月の日本選手権、9月の全日本実業団、10月の国民スポーツ大会)を達成することができたので、まずまずのシーズンだったと思います。
シーズン当初から『全勝』を目指していたので、最後の大会で負けてしまいましたが、ケガがある中で18メートル29を投げることができたのは目標的にはまずまず。もちろん悔しさはありますが、来シーズンに向けた目標といった部分では負けて得ることもありました。来シーズンは、(今シーズン達成できなかった)全勝と日本記録の更新、そしてアジア選手権出場を目指しながらこの冬も有意義に時間を使っていきたいと考えています。
―あらためて地元・福井での大会に臨んだ心境を振り返ってほしいはぴっ♪
(今シーズンは)シーズンインから調子が良かったので、口には出していませんでしたが、自分の中では19メートルの投てきを狙っていました。(日本人選手として初となる19メートル台)を投げるとしたら日本選手権か、地元の福井で開催されるANGだと考えていました。
6月の日本選手権では土砂降りの雨の中で、自己ベストタイとなる18メートル53を投げることができたことが自信につながりました。すぐに気持ちを切り替えて、自分がやりたい投げをイメージしながら修正して臨んだのが8月のANGでした。
(日本選手権後)ANGの1ヶ月ぐらい前から、海外選手の動画と見比べて、自分に足りないものを修正することができれば自己ベストの更新を狙えると考えていました。1投目から5投目まで調子もよくて、ちょっと空回りしている部分がありましたが、日本にはないような会場の雰囲気と、投げる場所から10メートルも離れていない距離にいた観客からの応援の声が19メートルを投げる糧になったと思います。
―日本記録保持者になった率直な気持ちを教えてほしいはぴっ♪
それまでの日本記録は、自分の母校である国士舘大学の先輩でもある中村太地さんの18メートル85(2018年)。新記録を出すなら同じ国士館からと思っていました。
(現役選手の自己ベスト記録で)2番手、3番手の挑戦者だった自分が福井の大会で一気にトップになり、追われる立場となって、「優勝するのが当たり前」という雰囲気に変わりました。そういった部分で、10月の国民スポーツ大会でも1投目から4投目まで負けている状況の中、「勝たなくてはいけない」という意地の部分で勝つことができました。
(国体では)これまで2年間、ずっと3位でした。国体開催の時期に勝ち切ることが得意じゃなかったというか、気持ちの部分で合わせられないことが多かったので、今年は5投目、6投目で日本記録保持者としての意地を見せることができたと感じています。
―あらためてANGで日本新記録となった19メートル09の投てきも「最終6投目」だったはぴっ?!
大会の決勝では7番手、8番手と最後の方で投げることが多いのですが、「6投目でトップの記録を出せば優勝できる。相手に焦りの気持ちも生まれてくるので、ベストの投てきをできない可能性が出てくる」といった気持ちで思い切って投げています。
やっぱり、6投目は失敗しても成功しても記録を狙いに行く投げができるのが大きいですね。最初の1投目からファウルで入ってしまうと気持ち的にも不安が増えてしまうので、大体自分の中で記録を狙うのは 3投目からですね。
―砲丸投げについて、奥村選手が感じている競技としての魅力を教えてほしいはぴっ。
遠心力を利用して投げる、他の投てき種目と違って、遠心力を感じられないほど自分の軸の近くにある7.26キロという重たい砲丸を遠くに投げることは簡単なことではありません。
自分自身の記録に挑戦していく中で、 1投目から6投目まですべて同じ投げができるわけではないので、その中で次の投てきについて考える部分と、自分の意思と体の動きがどう連動するのかを探求していく部分が 魅力的だと感じています。
相撲との掛け持ちという形で小学6年生の時に陸上競技を始めて、本格的に取り組み始めたのは中学2年生の頃だったと思います。この年の秋に、全国大会出場まであと10数センチという記録を出して、砲丸投げで全国を目指したいという気持ちになりました。
中学3年生の時、和歌山国体で日本中学記録となる17メートル85で優勝。「もっと強くなりたい」と思い、親元を離れて敦賀高校に進学することを決めました。高校では福井国体で準優勝することができましたが、走る、跳ぶといった基礎体力をみっちりと鍛えてもらえたおかげで、大学進学後にとても役立った3年間でした。
国士館大学時代は、1年生から4年生まで毎年自己ベストを更新することができましたが、一番印象に残っているのが4年生の時の関東インカレです。ハンマー投げを得意としている選手がいきなり17メートル41の記録を出して逆転されて、最終の6投目で18メートル26を投げて優勝できた大会でした。それまでの自己ベストは17メートル47で、初めて18メートル台に到達した、人生を変える一投だったと思います。2連覇もかかっていた、負けられない大会でした。
―最後に、今後に向けた抱負や将来的な目標を教えてほしいはぴっ。
そうですね。来年も福井での試合にしっかりと合わせて、また19メートルを投げて日本記録を更新したいと思っています。
大きな大会に出場したい気持ちはありますが、今はまだ世界選手権やオリンピックを狙えるレベルにいません。まずはアジア選手権などの大会にコンスタントに出場できるようになりたい。19メートル50を投げることができれば、アジア選手権でメダル圏内に食い込むことができると考えています。
30歳ぐらいから自分の投げ方や体の使い方がわかってくると言われていて、自分としても35歳まで競技を続けていきたいと考えています。来年25歳になりますが、競技者としてはまだまだ。もともと25歳で19メートル台を目標に設定していて、1年早く投げることができているので、しっかりと投てきを積んで安定させることが今後につながっていくと思います。
社会人2年目の今シーズン、日本記録保持者となった奥村選手から「これから3年、4年ぐらいは本当に記録が上がってくるシーズンになると思います」と、飛躍と成長を予感させる力強いメッセージ。「まずはアジア選手権」と謙虚な姿勢を見せる奥村選手ですが、さらなる記録更新と世界で活躍する姿を期待したくなる福井出身アスリートから来シーズンも目が離せないはぴっ!