公開日:2025年11月12日
「東京2025デフリンピック」デフバスケットボール日本代表、丸山香織選手へのインタビューはぴっ♪
2024年のアジア大会決勝戦
はぴっ♪
日本で初開催となる聴覚障がい者の国際大会「東京2025デフリンピック」(11月)。デフバスケットボール女子日本代表として出場する鯖江市出身、丸山香織選手にインタビューしてきたはぴっ!
これまで国際大会に4度出場、デフリンピックは今回が初出場となる丸山選手。デフバスケットボール競技日本代表の予選は11月18日、20日。「無言の中で息を合わせるチームの一体感に注目して観戦してほしい」(丸山選手)と話しているはぴっ。

9月に杉本福井県知事を表敬訪問した丸山選手
―最初に、デフリンピック日本代表として出場する大会に向けた意気込みを教えてほしいはぴっ。
日本開催のデフリンピックに日本代表として出場できることは、私にとって本当に特別なことです。これまで支えてくれた家族や仲間、そして応援してくださる多くの方々への感謝の気持ちを胸に、日本開催という最高の舞台で、自分らしいプレーを全力で届けたいと思います。
また、この大会を通して、デフスポーツやデフバスケットボールの魅力が、より多くの方に伝わるきっかけになればうれしいです。
「デフスポーツ」は、耳に障がいのあるアスリートが取り組むスポーツ全体を指す言葉ですが、その中で私が取り組んでいる競技が「デフバスケットボール」になります。
どちらの言葉にもそれぞれ大切な意味があり、デフスポーツという広い世界の中で、デフバスケットボールを通じて多くの方に魅力を伝えたい。競技を超えて“デフスポーツ全体の発展に貢献したい”という想いがあります。
デフスポーツの魅力は、誰もが自分らしく輝けるところだと思います。音がなくても、仲間と心で通じ合いながらプレーする時間は本当に楽しく、たくさんの笑顔が生まれます。デフバスケットボールを通して、「伝える力」や「思いやる心」の大切さを感じてもらえたら嬉しいです。
―丸山選手がバスケットボールを始めたきっかけは?
バスケットボールを始めたのは2011〜2012年、東陽中学校に入学したときになります。それから高校、社会人と続けていて、競技歴は約13年になります。
小学生のころにプレーしていたバレーボールも好きでしたが、バスケットボールはより動きが速く、瞬間の判断や仲間との連携が求められる分、達成感が大きいと感じています。気づけば、バスケットボールが人生の一部になっていました。
(バスケットボールを始めた)もう一つの大きな理由は、部活の顧問の先生がとても理解のある方で、聴覚障がいについてもきちんと受け止めてくれていたことです。「この先生のもとでバスケを学びたい」と思える出会いだったことが、今でも心に残っています。
2017年に足羽高校を卒業し、福井県内の企業に就職しました。社会人として働きながら競技を続けることに不安もありましたが、バスケットボールは自分の軸であり、まだ続けたいという気持ちが何よりの原動力となりました。
―デフ(聴覚障害)バスケットボールとの出会いについて教えてほしいはぴっ。
デフバスケットボールについては、社会人になるまではその存在を知りませんでした。父親の友人にデフバスケットボール選手がいて、その時に初めて「デフバスケットボール」を知りました。自分も聴覚障害を持つ身としてこの世界を知ったからには「どんな感じなのだろう?」「どんなプレーをするのだろう?」と興味が湧いてきて、デフバスケに挑戦する事にしました。
当時は、聴者チームとデフバスケットボール、どちらも続けたいという気持ちがありました。どちらの環境にも学びがあり、どちらも自分を成長させてくれる場所だったからです。
ただ、次第に「聞こえない自分だからこそできるプレー」を追求したいと思うようになり、デフバスケにより力を注ぐようになりました。私にとっては、どちらかを選ぶというより、“バスケットボールを続けていくこと自体が挑戦”でした。
―今までアスリート(競技者)として競技を続けてきた丸山選手が話す「原動力」とは?
「挑戦し続けたい」という信念が競技を続けてきた原動力となっています。私にとっての「挑戦」は、聞こえないという環境の中で、どう自分を表現するかを常に考え続けてきたことです。そして、今の自分にできることを考え、行動し続けてきました。
支えてくれている家族や仲間、応援してくださるファンの皆さんの存在が、何よりの力になっています。その積み重ねが、私を強く成長させてくれたと感じています。

聴者チーム(AFBB)の試合 ©️ Photo by Yuta Kuwahara
―バスケットボールやデフバスケットボールの魅力について、これから試合を観戦する人たちに向けて、アドバイスをお願いはぴっ。
どれだけ多く得点を決められるか?どれだけ多く相手の得点を抑えられるか?チームによってはスピーディーな展開をするチームや、組織的なプレーをするチームもあります。また身体能力や高さがあればそれだけ有利ともいえますが、高さがなくてもコートを縦横無尽に走ってロングシュートを決めるというように、様々な局面での見所があるスポーツだと思います。
また、デフバスケットボールでは、聴覚にハンディがあっても、スピード感と迫力のあるプレーが魅力です。選手たちは声を使わず、ジェスチャーや合図でタイミングを合わせ、連携プレーを生み出します。ボールの動きの速さや、無言の中で息を合わせるチームの一体感に注目して観戦していただきたいですね。
―あらためて、丸山選手の現在の所属チームや練習時間、活動内容について、自己紹介してほしいはぴっ。
現在は、東日本地域リーグ(実業団リーグ)に所属する AFBB でプレーしています。平日は仕事をしながら、夜や週末の時間を利用して練習に取り組んでいます。
今所属しているチームは聴者中心ですが、「聞こえる・聞こえない」に関係なく、“伝える・伝わる”ことを大切にしています。みんなが手話やジェスチャーを交えてコミュニケーションを取ってくれて、バスケットボールを通じて「聞こえる・聞こえない」の壁を越えてつながれる場所になっています。お互いに理解しようとする姿勢があるからこそ、コミュニケーションの壁も少しずつなくなっていきました。その環境でプレーできることが、私にとって大きな支えになっています。
また、講演会やデフバスケットボール体験会などの活動も行っています。私自身の経験を通して、少しでも多くの方にデフスポーツを知ってもらいたいという思いで、出前授業や講演を続けています。話を聞いた子どもたちが「耳が聞こえないって大変だけどすごい」「手話をやってみたい」と言ってくれると、本当にうれしく、続ける力になります。今後も、自分にできる形で、デフスポーツの魅力や聴覚障害について発信していきたいです。
日本代表合宿時の丸山選手
―丸山選手のプレーの強みや持ち味、目指しているプレースタイルは?
自分の強みは、どんなポジションでも対応できる柔軟性とフィジカルの強さです。スピード勝負ではなく、身体の強さで相手を押し切るパワープレーが持ち味。また、仲間との連携を重視し、手話やサインで瞬時に意思疎通しながらチームを動かすことを意識しています。
今回のデフリンピックに臨む日本代表チームは、ハードディフェンスからの速い展開を重視するプレースタイルが特徴です。メンバーは個性豊かで、各自が得意なプレーを活かしつつ、全員でカバーし合うチームワークを大切にしています。
私のポジションはPF(パワーフォワード)です。身長は168センチ。スピードはそこまでない分、フィジカルの強さを生かしながら、当たり負けしないプレーや相手の動きをよく見てタイミングをずらすことを意識しています。
パワーフォワードとして、チームの攻守の起点となり、状況に応じてセンターも務めるオールラウンドな役割を担っています。ゴール下で体を張るプレー、リバウンド、ドライブ、3Pなど、相手の状況に応じて得点を取ることが自分らしいスタイルだと思っています。
また、チーム全体の動きを見ながら仲間を活かすプレーや、自分らしい積極的な仕掛けを通して、日本代表の戦術を最大限引き出せるよう、全力で取り組みたいと思います。
―国際大会でのプレー経験のある丸山選手。海外選手と対戦する「デフリンピック」で海外選手と対戦するうえでのポイントや心構えについて、聞かせてほしいはぴっ。
初めての国際大会となった2018年のU21世界選手権では、世界のレベルの高さやプレースタイルの多様さを肌で感じる貴重な経験となりました。試合のスピードや身体能力の差を実感する中で、自分の判断力や持久力、フィジカルをさらに高める必要があると痛感しました。この経験を通して、世界の舞台でも自分らしく挑戦することの大切さを学び、精神面でも大きく成長するきっかけとなった大会でした。
世界各国の選手は、身体能力やフィジカルがとても強い選手が多いです。高さで劣る場合は、横の動きで相手を揺さぶるなど戦術でカバーし、40分間走り切るスタミナと、相手に自由にプレーさせない粘り強いディフェンスでプレッシャーをかけたいと思っています。
オフェンスでは、日本の強みである3Pシュートを活かし、オープンになったタイミングで積極的に狙っていきます。チームの勝利のために、自分の役割を全力で果たし、コートで存在感を示したいです。

―国内初開催となる「東京2025デフリンピック」に期待すること、今大会での目標などについて、聞かせてほしいはぴっ。
オリンピックと同じように、デフリンピックは4年に一度の大舞台です。 2025年は母国・東京で開催されるので、日の丸を背負う身として、多くの方に「デフリンピック」や「デフバス
ケットボール」、デフスポーツの魅力を知ってもらえる絶好の機会だと考えています。日の丸を背負ってプレーできることは、何よりの誇り。感謝を胸に、自分らしいプレーで全力を尽くします。
でも、この東京デフリンピックがゴールではありません。大会を通して、子どもたちがデフバスケットボールを始めるきっかけになり、競技人口がさらに増えることを願い、日々の練習に全力で取り組んでいます。

―最後に、「デフリンピック」出場を前に、地元・鯖江や福井県民に向けてメッセージをお願いはぴっ。
私の競技人生に大きな影響を与えたのは、やはり地元、福井での経験です。中学・高校時代での練習や全国大会出場は、今でも忘れられない思い出です。特に恩師やチームメイトとの交流は、バスケだけでなく人としての成長にもつながりました。
また、家族がいつも応援してくれたことも大きな支えで、ここまで競技を続けられたと思っています。どんな時も見守ってくれる存在がいることが、私の力になっています。こうした経験や支えがあったからこそ、今の自分があり、世界の舞台でも挑戦し続ける気持ちにつながっています。
私たちデフアスリートは、聞こえないという特性があっても、自分の限界に挑戦しながらチームで戦っています。私にとっての「挑戦」とは、聞こえないという環境の中で、どう自分の力を最大限発揮できるかを常に考え続けること。それこそが、私にとっての挑戦の本質です。
「聞こえないってどんな感じだろう?」と少しでも興味を持っていただけたら、ぜひデフスポーツに触れてみてください。まずは「知ること」からがスタートです。
東京デフリンピックのデフバスケットボール競技は、大田区総合体育館で開催されます。
(11月18日 15:30~、11月20日 15:30~に予選を予定)
会場での応援、どうぞよろしくお願いします!これからも感謝の気持ちを忘れずに、挑戦し続けます。そして、地元の子どもたちにも「自分らしく輝ける場所が必ずある」ということを伝えたいです。
